【潜在看護師と復職の難しさ】
結婚や出産などで一旦看護師を辞めてしまったが、また看護師として働きたいという意欲を持っている人も多くいます。また、看護師の資格を持っていながら実際には看護師として働いていない「潜在看護師」も相当数に登るとみられています。看護師不足の解消のためにそういった資格保有者を利用しようという動きも始まっています。パート職員や短時間正職員の採用などの他、ブランクのある看護師向けの研修制度なども行われていますが、現時点ではそこまで大きな効果は見られない様子です。
一度いじめやパワハラ、クレーマーなど嫌な体験をして離職した看護師が復職するには相当な勇気がいる上に、家庭の事情で退職した場合でも復帰はなかなか難しいと言います。医療技術や制度は日々進歩しているのでブランクの間に自分がやってきたやり方が変わっていたり、見たこともない機器が導入されていることもあります。ただでさえ忙しい現場ではそれをゆっくり聞いていられる暇はないので足手まといになってしまうことも十分考えられます。それは例えば、どの車も超高速で走っている高速道路から脇へ逸れて降りるのは簡単でも、また合流するのは難しいようなものです。合流するために適当な加速車線でもあれば分かりませんが、それがほとんどないような状態ではなおさらの事です。
【転職を繰り返すジプシーナース】
終身雇用制が崩れた現在でも、一般的には転職はあまり好まれない傾向があります。一度や二度程度ならまだしも、何度も転職を繰り返しているような人は採用段階でも敬遠されてしまいます。しかし、看護師の場合は転職は珍しいことではなく、それほど不利になる要素でもないようです。人によっては転職が多いほうがかえって経験豊富だと思われると言っているほどです。看護師の特徴はそれが「資格職」だということです。単にどこでも人手が不足しているだけでなく、資格がなければなれない仕事なので一般的な仕事よりも転職がしやすい状況にあるようです。
また、看護師の職場は肉体的、精神的にも大変きついので離職率も比較的高くなっています。病棟勤務だけでなくクリニックやデイサービスといった現場でも看護師の離職率は高いと言われています。転職する理由はさまざまですが、看護師の転職経験者の意見の特徴として「あの職場は駄目だったが、看護師の仕事自体は好きなので次を探した」という意見が多いことです。うつ病になってまで休職、退職をしているのにそれでもまた看護師になろうという人もいます。そのため、数カ月から数年であちこちの病院を転々としている「ジプシーナース」も少なくありません。
とはいえ、看護師を続けたいという熱意だけでは状況は改善しません。看護師にはまだまだ女性が多いので、きちんとした職場環境が整っていなければ安定して働き続けることができないのです。日本はほとんどの場合、女性が安心して結婚して子育てができる職場は確保されていない状態です。さらに夜勤があり、日曜祝日や正月にも休めないような職場環境でストレスと戦いながら勤め続ける訳ですから辞めないほうが不思議くらいです。看護師を続けるには家族の理解と職場環境と本人のモチベーションの維持が必要不可欠なのです。